絶対領域綺麗。
オレ、好きだな…おまえの。
同じ学校に通っていたことがある。そのころからの付き合いだが、別に恋仲だとか、そういうわけではない。
身体を重ねるようになったのはいつからだったか。昔はへなちょこだとか呼ばれていた男も、今やひとつのファミリーを束ねるボスだ。おたがい忙しい身だが、たまにあっちから訪ねてきて、こうして会うことはある。
いつもは部下を連れ歩いているが、自分に会いに来ていることは秘密にしているらしい。おそらくは部下たちはボスの動向をすべて把握しているとは思うが。
「………起きてるか?」
耳元に甘い声音が吹き掛けられる。ずっと黙ったままだったから不思議に思ったらしい。背後にいる相手から自分の顔は見えないから。
「起きてる」
短くそれだけ返す。この状態で眠れるわけがない。このまま寝たらきっと溺れるだろう。
「ずっと黙ってるから。どうした?」
「話すこともないからだ」
こいつは事後、こんな風に一緒に入浴するのが好きらしい。湯舟に浸かるというのはどうも性に合わないのだが。さっきからこうしてオレの髪をいじっている。
自分は湯舟の縁に座って、洗髪に精を出している。物好きなやつだ。
「こんな伸ばしてどーするんだ? 願掛けか何か?」
「…べつに」
理由なんて。
伸ばし始めた最初の理由はあった気がするが、もう忘れてしまった。
「流すぞー」
「…ああ」
シャワーの湯がかけられる。こういう作業は得意なのか、なかなかうまいとおもう。シャワーと髪を梳く指が心地よい。
「……あれを覚えてるわけじゃないんだな」
「あ?」
なにか話したようだったが、シャワーの音で掻き消された。振り返って聞き返す。久しぶりに見た琥珀の目は、いつも通り笑んでいた。
なんとなく…沈んだ声だった気がしたのだが。
「なんでもない」
そういうのならそうなのだろう。自分たちは深くかかわり合う関係ではない。
長い付き合いだが、入り込んではいけないテリトリーがある。
それでも、こうして髪をいじられるのが心地よく感じるのは。
こうして会っては恋人のまね事みたいなことをしているのは。
多分、惰性というやつなのだ。
「変わんねーな。相変わらず、綺麗な髪だ」
…今度はしっかり聞こえたが。
もちろん、聞こえないふりをした。
end.
36・37号のスクアーロの髪のお手入れの話から妄想。ついでに髪を伸ばし始めた理由とか。
スクアーロのキャラとか話し方が掴みきれてないな。
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